◆R・ヴェンチューリ 『建築の多様性と対立性』
 

ヴェンチューリのわかりやすさ

『建築をめざして』の次に影響力の大きな本ということがどこまで正しいのかわからないが、本書はコルビュジエの本とは大きく異なる。
いちばん違う点はその文体の明晰さだ。

ヴェンチューリの文章にはコルビュジエのような難解さはない。
そのため本書の内容は要約することがそれほどむずかしくはない。

本書の内容を簡潔にまとめるなら、ヴェンチューリ自身の次の一文で要約可能だ
「状況を少し違った角度から見ると、好ましからぬと見えたものが好ましいものとみなしうることもあるのではなかろうか」

彼のもうひとつの代表的な書物である『ラスヴェガス』でもこの基本的なスタンスは変わらない。

現代建築が礼賛してきたのは「最小限」ということだ。
それは全体を統合することを容易にするからだ。

そうでないものには、全体としてまとまりに欠けたもの、一貫性のないもの、曖昧なものとして見なされ、評価の対象からは排除されてきた。
そのような状況に対しヴェンチューリは別の視点を与える。

別の視点とは「多様性」と「対立性」の二つだ。

多様性とは「それとも」でつなげられる二重の機能だ。
たとえば中央に裂け目のある建物なのか、「それとも」ふたつの建物がくっついたものなか、などというふうに。

対立性とは「にもかかわらず」でつなげられる二重の意味である。
たとえば中庭のようなある空間について、閉じている「にもかかわらず」開かれている、などというふうに。

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