◆ヴィンセント・スカーリー 『アメリカの建築とアーバニズム(上)』
 

 

ボザールでゴザール

 本書では章立てがなく地続きの文のまま、住宅、公共建築、都市計画、さらに次の時代の建築と都市と進んでいく。

 それぞれにおいて例としてあげられる建築作品は多数あるが、それらの説明が次々と対象を変えて進んでいく。

 そのためスカーリー自身がどのような視点で個々の建築をとらえているかがいまひとつ見えずらい。

 それでも、はっきりとわかるのはスカーリーはボザールに対して、とくにその歴史性についてかなり好意的にとらえているということだ。

マッキム、ミードアンドホワイト設計のコロンビア大学図書館 (https://ja.wikipedia.org)

マッキム、ミードアンドホワイト設計のコロンビア大学図書館
(https://ja.wikipedia.org)

 スカーリーはボザールに対して、次のような認識でいる。

 まず、ボザールはフランスの芸術教育システムがつくったものである。
 それは歴史に支えられた体系的なものである。
 そのため、個人の完全な独創性というもの信じてはいなかった。
 けれども共通の形態語彙のなかで、かたちを個性的に取り扱えることはできると考えている。
 それはルネサンス的方法でもある。
 ルネサンスの作品が個々の違いがあっても共通した特色を有しているのは、それを可能にしている秩序によるものである。そのようにスカーリーは考えている。

 これは近代建築には見られなかった要素だともいえる。コルビュジエとライトとミースのあいだに共通したものは見出せない。

 では、そのようなボザールがアメリカにもたらしたものがなんだったのか。

 スカーリーは次のように書いている。
「アメリカが、国際的な、あるいはむしろ帝国主義的な時代に入りかかったちょうどその時機に、フランス派がアメリカ建築に与えたものは、まさにその秩序―秩序と伝統―だったのである」

 つまり、伝統のない新興国家が定まった方向性もなく進歩しようとするときに、歴史に支えられたあり方で建築、都市計画に、ある秩序をあたえていたがボザールであったということなのだろう。

【関連】
建築書レビュー 一覧(コルビュジエ、ライト、ギーディオン他)
R・ヴェンチューリ 『建築の多様性と対立性』 
フランク・ロイド・ライト 『フランク・ロイド・ライトの現代建築講義』

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