◆アドルフ・ロース 『装飾と罪悪』
 

-時代に冷遇された建築家の信念-

  

 

おもしろい本

 本書には読みものとしてのおもしろさがある。
 これをうまく伝えることは難しいのだが、著者自身の冗談をまじえた語り口によるところが大きいように思われる。

 また、本書に収められた文章からはおもしろみだけではなく、建築に対する強い情熱も感じられる。

 タイトルの『装飾と罪悪』からも見て取れるように、著者の建築に対する姿勢は「装飾に対する否定」であると、まずはいうことができる。

 著者のアドルフ・ロースは一八七〇年に現在のチェコに生まれた。
 その後、ウィーン、パリを中心に活動した建築家である。

 建築史においては、「近代建築の地平を切り拓いたパイオニアの一人」と位置づけられる。
 実作も残されているが、当時は「あまりに装飾がなさ過ぎるために景観を阻害する」ということで、建築許可が下りないということがたびたびあったようだ。

 本書は複数の論文を集めた構成になっており、これらはロースの全集から抜粋されたものたちである。

 執筆当時、ヨーロッパの建築はアカデミーを中心とした古典主義的なものが主流であった。
 ロースは「近代建築のパイオニアの一人」とされていながらも、この古典主義というもの自体を否定はしていない。

 むしろ、古代ローマやギリシャの建築から学ぶべきであると主張する。

パルテノン神殿(wikimedia.orgより)

Pages: 1 2 3 4 5 6

Sponsored Link