◆ウィトルーウィウス 『建築書』2/2
 

-世界でもっとも古い建築書- 2/2


 

建築書の起源

 後半の第六書の序にて、ウィトルーウィウスは学問の重要さを説く。

「学問の助けによらず幸運の助けによって自分をまもろうと考えている人たちは、滑りやすい道に歩を運んでいる」

 また、富の所有が賢さをあらわしているわけではないことも書いている。
 ウィトルーウィウスは「悪評を伴った富裕よりもむしろよい評判を伴った貧乏を良し」とすると言い、このような記述から彼自身が建築家として成功しなかったのではないかという見方をされることもある。

 

住む家の配置についての考察

 住む家について、宇宙のどの傾きに定められるかが配慮され、正しく配置される必要がある、と書く。
 北部の地域では開放的ではないが暖かい方へ向いた部屋をつくるべきであり、南部の地域ではなるべく開放的で北と東北に向いた部屋をつくるべきであるとする。

 ウィトルーウィウスは「自然が損なうものは技術によって正されるべき」と主張する。
 開放的であることの理由は風の流れを正すためにあり、方角は日差しを正すためにある。

 さらに、ウィトルーウィウスは、自然によって異なる性質をもつようになるのは、その土地だけでなく人体についてもあてはまるという。
 北と南でそれぞれ育った地域による差、体型、肌の色、髪質、声の高さ、などのついてを書く。
 また、暴力に対する意識と、熟慮に対する意識の違いもあるという。

 このようなことは、現在では人種差別に対する人道的なありかたから、はっきりと書かれることはないかもしれない。
 本書が書かれた時代にはそのような差別をなくそうとする歴史もおそらくなく、地域による差は当然のものとしてあったものだろうと思われる。

「それぞれ異なった地方は天空の傾きによって様々な様態につくられていて、その結果人々の自然性は精神においても肉体の形と質においても不同に生れついている」
「われわれはまた家の造り方を種族に適応するように、人々の特性に適応するように分類する」

 このような考え方はある意味ではごく当然のことであるとも言える。

 その土地によって、その利用する用途によって、それを利用する人によって、どのようなものをつくるかは自ずと変わってくる。

ローマ時代の建築 フォルムと呼ばれる施設 (https://ja.wikipedia.org)

ローマ時代の建築
フォルムと呼ばれる施設
(https://ja.wikipedia.org)

 たとえば図書室については、書物という紙でできたものを扱うことを考えれば湿度の高さは極力避けるべきである。
 そこから、ウィトルーウィウスは「寝室と図書室は東に面しなければならぬ」「南や西に面する時は、いつも虫や湿のために書物が損われる」と書く。

 また同じ考え方から、「春と秋の食堂は東向き」に、「金貸しや収税吏にはもっと工合のよい」「盗賊を防ぐことができる室」を用意するといった考察がなされる。

 「葡萄酒の庫が、窓による光線を北から」採るのは、熱で酒が悪化しないためであるし、「油の貯蔵室は南あるいは暑い方角から光を採るように配置さるべき」なのは油が凝固しないように、熱で稀薄にされるべきだからである。
 あるいは、「穀物は急速に蒸れることがなくて、通風によって冷やされ、いつまでも貯蔵される」必要がある。

 方角による差や地域による差は当然のこととしてあり、それをないものと考えていては、さまざまな不具合が生じる。

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