◆ル・コルビュジエ 『ル・コルビュジエ 図面集 vol.1 住宅Ⅰ』
 

-巨匠の試行錯誤と折衝-


 

変化していく図面

 本書はル・コルビュジエの図面集シリーズのなかの一冊である。
 『住宅Ⅰ』とあるようにこのなかには住宅の図面が収められている。

 この一冊のなかに収められている住宅は全部で三作品である。
 一〇〇ページを越す図面集なので、かなりの数の図面が収められている。

 作品ひとつにつき、ページ全体を使用している図面が約三〇枚、そのほかに小さい図面が一〇から二〇枚ほど集められている。
 つまり完成図面だけでなく、設計過程の図面や着色された完成予定のイメージ図、メモなども多数収められているのである。
 これらから、進行にともなって変化している設計の過程がみられて興味深い。

 設計の過程で少しずつ詳細が決められていくのだが、途中で大きな変更が発生しているものもある。
 それはクライアントからの要望であったり、コルビュジエのなかで生じた新しいアイデアによる変化なのだろう。

 ひとつの作品ははじまりから完成まで直線的に進むわけではもちろんない。
 迂回し、あと戻りし、変化していく。それまであったものがなくなったり、あるいはいままでなかったものが突然あらわれたりもする。

 途中経過の図面でもすでに十分高いクオリティのように思えるものもある。
 最終的には採用されなかったアイデアなども見ることが出来る。

 このようにひとつの作品を時系列で観察できるというのが本書の大きな魅力のひとつとなっている。

 図面だけでなく、本書ではそれぞれの作品について、ティム・ベントンによる解説がある。
 解説では設計過程でのクライアントとのやりとりや、変更していくなかで重要な図面についても説明される。

収録されている住宅

 本書に収録されている図面は次の三つの住宅のものである。
 ・スタイン - ド・モンヅィ邸(一九二六年)
 ・ベゾー邸(一九二八年)
 ・ド・マンドロ夫人の別荘(一九二九年)

 当時のコルビュジエといば、一九二七年に国際連盟ビルの設計競技で敗北している。
 とはいえ、世界的なコンペに参加できる知名度と実績はあった。

 二〇世紀の名作建築といわれるサヴォア邸が一九三一年に竣工しており、一九二九年あたりには設計されている。
 本書に収録されている住宅も、ほぼ同時期に設計されたものであり、コルビュジエが住宅建築の設計において、もっとも脂の乗った時期の作品ということがいえる。

スタイン -  ド・モンヅィ邸 (http://en.wikiarquitectura.comより)

スタイン -  ド・モンヅィ邸
(http://en.wikiarquitectura.comより)

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